忍者ブログ
ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ようこそ。色々と見苦しいものも載ってたりしますが、それでも良いならどうぞ楽しんで行って下さい。
 ここはポケモン(ハートゴールド、ホワイト)の二次創作のメモ帳です。オリジナルトレーナーが出張ってたり、その子がゲームの既存キャラといちゃいちゃしてたり、ポケモンの擬人化案が転がってたりもしますので、そういうのが苦手な方はご注意下さいね。
 なお、たまに他所様のオリジナルキャラクター(トレーナー、擬人化ポケモンなど)をお借りしています。

うちの子ご自由にお描き下さい同盟 ネタバレ上等委員会
↑イラストだけじゃなく、文章の交流も大歓迎ですよ、と言ってみる…。
 ここで公開している、他所様のキャラクターをお借りした作品は、そのキャラクターの親御さんならご自由にお持ち帰り頂いて構いません。


 現在こちらに移転してます。
 此処は更新停止してます。

◎コラボサイト
 蒼風雲夢
 蒼埜様宅『鳥籠の棺』とのコラボサイト。


 基本的なジャンルの傾向は以下の通りです。

未選択…短編など含む。というか、主に短編。
設定…後から参照したい設定など…かな?主に人物関連。
世界観考察…後から参照したい設定など…かな?こっちは世界観。
トリップ本編…一応、最初から順番に書いています。
イラスト…写メから普通のイラストまで。写メメインですが。
・グリミレ(小説イラスト)…グリーンさん×オリトレのミレイ。
パラレルなど脱線ネタ…普段の設定とは異なる一発ネタの設定や、それを用いた小ネタなど。
擬人化絡み…まず使わないでしょうが、念の為。
エチャログ…エチャがあまりにネタを降臨させてくれるので、メモ。
メモ…短編や設定の構想などを書き散らしている所。
・with 鳥籠の棺(小説イラスト)…『鳥籠の棺』と絡んだものはここ。
ミハウタ?…ミハルさん(空ラボ様宅オリトレ)×ウタタさん(歌多様宅オリトレ)の捏造話、他。
頂き物…ありがたい頂き物で、転載許可を貰ったもの。
はじめに…ここの事です。


↑拍手レスは、できそうな内容の場合はします。現在お礼は(本家サイトとは別で)3種類です。
PR
 そんなこんなで、今は皆で玄関に来てる。靴を履かなきゃいけないからな。
 ミレイは弟と別れを惜しんでいる。
「んじゃ、行ってくんね。……また、喋ろうな」
「あー、はいはい。どーせ寂しくなってもどうにでもできるやろ? んな凹むな」
「……最後にセクハラして良い?」
「やめれ。……こらっ、やめろっつったろうが! ええ加減にしろや!」
 ミレイは弟をギュッと抱き締めた。弟の方は至極迷惑そうにしていたが、気持ちは分からないでもなかったのだろう、抵抗もしていなかった。
 オレはと言えば胸がモヤモヤしたが、オレがナーバスになった時にミレイが何も言わずに横に居てくれた事とかを思い出すと、今回はぐっと堪えようと思えた。
 やっぱり、一番の強敵はこいつだというオレの見込みは合ってたんじゃねーかとも考えたけどな!
 ミレイは異常なまでにブラコンだと思う。オレもシスコンと言われた事はあるが、ミレイのそれはちょっと行き過ぎだ。
「……ごめん、むぅちゃん、リィちゃん。お願いします、えーと……碓井さん?」
「一般人はいないからアルセウスで構わぬ。もう良いのだな?」
 ミレイは頷いた。
「善は急げって言いますし。思い悩む前にやっちまえって言いますし」
 ミレイはそういうと玄関先から降りて、靴を履いた。
「そうか。では、行くぞ」
 一度経験した、眩しい光が辺りを包む。


「……わたしは、何を?」
 光が消えた跡には、一人の女性。
「何をって……買い物から帰ってきたんやろ?」
 満は、そう声を掛けた。
「……あ、あー。そうやったね。ほな、勉強の続きしてくるわ。何でアンタにつきあってポケモンセンターなんかに行ったのか、わたしの正気が疑われるけど、とりま遅れた分は取り返さな」
「たまには息抜きした方が……」
「ふんっ、サボることしか頭にないアンタなんかに言われてもな」
 二階に上がっていく「姉」を見送りながら、満は嘆息した。
「……あー。俺から焚き付けておいて何だけど、やっぱクルものがあんなー。まぁ、次は俺かもしれんけど」
 何気に意味深な事を呟き……彼は姉が荷造りをしている間、アルセウスに仄めかされた未来に思いを馳せる。
「どうしたもんかなー。俺は別に、姉ちゃんと違ってこっちにも未練ありまくんねんけどな……」


「……ああ、ただいま」
 ミレイの前にいるアルセウスは、今は本来の姿。それを見て、彼女は感慨深げにそう呟いた。
 俺にとっては見慣れた、彼女の本来の年よりも若い姿で。
「お、リィちゃんも元に戻っとる。もしかして、わたしも若なってる? 身長差同じ感じやし、縮んでるかな」
「ああ、そうだな」
「そっかー。ちょっと安心した。別に年下と付き合うのは問題ないけど、身長差がなくなってると甘えにくい」
 堂々とそんな事を言うミレイは、何かを吹っ切ったようだった。
「甘えにくい?」
「……んにゅう」
 一瞬躊躇う素振りを見せ、けれど彼女はオレの腕を掴み、肩に頭を乗せる。
「要するにこういう事がやりにくいねんって事……。うぁー恥ずかし……」
 恥ずかしいからと言ってぐりぐりと顔を伏せ、押し付けてくるのは逆効果だと思う。けど、言ったら離れていきそうだな。
 そんな事を考えていたら、いきなり声を掛けられた。
「ミレイちゃん、グリーン君、おかえり! お熱いね~、ひゅーひゅー!」
「お、お熱くて悪かったな!?」
「ひゅーひゅー言うない!! って、ターちゃん!?」
 バッと擬音のつく勢いでオレから離れたミレイは、ウタタを見て目を見開いた。
「ターちゃんもグルやったんか!?」
「確かにグリーン君けしかけたり送り込んだりしたけど、ちゃんと約束は守ったんだからね! 彼は自力でミレイちゃんの事思い出したよ?」
「……グレン島で?」
 ミレイの訊ね返した内容に、一瞬息を止めてしまった。
「何故分かった?」
「えっ、そうだったんだ!?」
 そんな事は初耳と言わんばかりのウタタも声を上げたが、ミレイはそれは聞こえていないようだった。
「ま、マジか……。いや、昨夜、グレン島にいる夢を見てさ。そこにリィちゃんが登場したから……ね?」
 そういえばミレイの弟がそんな事を言っていたが、グレン島の夢だったのか。
「あんまりにも思い詰めてるようだったから、思わず話し掛けちゃったって夢やったんやけどね?」
 ……ん?
「『諦めてしまえば良いのに。もういない人の事なんて、忘れてしまえば良いよ』ってか?」
 今度はミレイが息を呑んだ。
「マジで?」
「マジだな」
「うひゃああぁ。成程。ごめん、ターちゃん。自業自得やったわ」
 謝られたウタタはと言えば、にやにやとしている。
「気になるなぁ」
「ネタにされる事は自重します!」
「つまりはそういう事なんだね!」
「うにぅ……」
「愛の力は偉大だね~」
「あぅ……」
 ひとしきりミレイをいじったら気が済んだのか、ウタタは笑顔からにやつきを消した。
「はい、ミレイちゃんのポケモン。リュウガ……だったよね? カイリューが鞄持っててくれてるから」
「わ、あんがと! これで生活できるっ!」
 モンスターボールを受け取るミレイもまた、笑顔だ。
 だがそれを聞いたウタタはまたにやにやとしだし……何故かオレをちらっと見た。
「生活……こっちでするんだね?」
「うん、問題はどこに住むかって事やけど、当分は今まで通り……」
「こらこら。それじゃ意味ないでしょ! ……なぁ、グリーン君?」
 これはもしや……。
「君ん家は空き部屋無いのかい? もしくはジムの居住空間とか?」
 ああ、やっぱりそういう事か。
 ウタタにいじられるのは恥ずかしいが、今はありがたくそれに乗らせてもらうとしよう。
「そうだな、オレの家は……」
 さて、ミレイ。覚悟はできてる筈だよな?
 今度こそ、逃がさないぞ。


逃避行~完~
「おう。おめでとう。んじゃ、親が帰ってくる前にちゃきちゃき荷造りしろ。ねーちゃんの夢にまで見た長期家出やで」
 けしかけただけはあって、ミレイの弟は姉の報告に淡々とこう返してきた。
「どうせ、例の紙束とか画材とか略本とか持ってくつもりやろ」
「……鞄にどんだけ詰まるかなぁ……。てか、向こうの世界にわたしの荷物、残ってるんやろか」
 図星だったらしく、ミレイはどこか遠い目をしながら言った。報告の時にものすごく壊れたテンションだったのが、一気に覚めた感じだ。
 夢心地だったのが、現実に引き戻されたのだろうな。
「どーせ、ねーちゃんの事やからまたこっちに顔出してくる気がしてなんねーんだよなー。だから、いざとなったら俺の部屋に隠してけば?」
「サンクスむぅ。恩に着る」
「まぁ、できれば一発で全部持ってけ、とは思うけど」
「ですよねー」
 やり取りを聞いていたアルセウスが、口を開いた。
「お前の荷物なら、お前のカイリューが持っているぞ」
「え、ホンマですか!? それは有難いです。ありがとうございます。て事は、向こうに着いてからの事に関してはあんまり考えなくても良し……っと」
 ミレイは再び、弟の部屋から出て彼女の部屋に戻ってきた。押し入れを開け、大きな鞄を取り出す。
「……聞いてーや、リィちゃん。こっちの世界、荷物がデータ化されへんねんで」
「え、マジか」
「マジも大マジ。せやから、こんなに大きな鞄持ったかて、リィちゃんが思とるほど物入らへんねん」
 どうやら、家の荷物全て持ち出すつもりかと勘繰ったのが、見透かされたらしい。
「貰いもんと創作資料と画材と略本はサルベージしたいなぁ」
「りゃくぼん?」
「攻略本の略ー。ポケモンの裏情報満載。わたし体力もセンスもないから、せめて知識でチートしてカバーしようかと」
 ああ、ポケモンセンターで売られていたアレか。
 思い返すと未だに鳥肌が立つ。オレの世界をそのまま再現したかのようなゲームが存在する事に。その証拠を目にした事に。
「……確かにゲームの世界かもしらんけどなー」
 ミレイは立ち尽くすオレを見上げて言った。
「それでもリィちゃんにとっては……そしてこれからのわたしにとっても、現実やで? 実在してるねんで? そこは信じて良いと思うねん」
「……」
「立ちっぱなしやと疲れるやろ、ベッドにでも座って待っててーな」
「あ、ああ」
 考えだすと頭がぐるぐるとして気持ち悪い。だから、素直にベッドに腰掛けた。
 ぼんやりと眺めていると、ミレイは何着かの服を詰め、アクセサリーを詰め、色鉛筆や筆箱を詰め、書物や紙束やファイルを詰め込み、更に色々と袋やらぬいぐるみやらまでギュウギュウと鞄に押し込めている。
「……そんなにいっぱい持って行くのか?」
「一応駆け落ちやし、もしかしたら二度と戻ってこられへんかもしれへんし」
「戻ってくるつもりかよ」
 何だか聞き捨てならない事を聞いたような気がする。
「夢の中でなら、戻ってこれんねん。帰り方探してた頃からそうやったから、きっと今回も夢の中でなら大丈夫やと思うねんなー。んで、根性出したら、夢の筈やのに何でか知らんけど、普通の鞄くらいの荷物なら何とか持って帰ってこれるっぽいねんよね。起きた時、めっちゃ疲れてんねんけど」
 鞄のジッパーを閉めるべく奮闘しながら、ミレイはさらりととんでもない事を言う。
「でも、所詮、わたしにとっては夢や。そうやのって、分かんねん。何でか知らんけどな。目を覚ませば、また寝た場所に戻ってきてんよ。たとえ夢ん中で世界の壁を越えてたって、な」
 パンパンに膨れ上がった鞄をいつものように右肩に掛け、ミレイは立ち上がった。
「ほな、行こか。懐かしのポケモン世界」
 果たしてミレイの部屋は、入口から見えた印象そのままに、物で溢れ返っていた。
 ドアから入ってすぐに、書籍が積み上がっている。本棚は本と大量の封筒で既にいっぱい。机の上の本棚も、半分は封筒で占められている。残り半分は、机の上に積み上がった山に隠されて、よく見えない。
 本の背表紙には薬理学だの病理学だの、画像診断だのと書かれていて。何とはなしに封筒を見たら、隅に消化器だの感染統合だの救急だのと書かれている。
 ――こいつ、医者の卵か!!?
 だが、溢れ返っているのはそういうお堅い本や封筒だけではなく、本棚の一部や机の上、更にはベッドの横の移動式ラックの上にまでぬいぐるみが鎮座していた。特にベッドの横に置かれているものは、どこからどう見てもポケモンドールだ。フシギダネ、チコリータ、ヒノアラシ、ミュウ、カイオーガ、ラプラス……。
「……リィちゃん?」
 上着をハンガーに掛けたミレイが、訝しげな声を出す。『パソコンの部屋』とやらに先に行ってる筈、とか思ってるんだろう。
 ――さぁ、腹を括ろうか。
「なぁ、ミレイ」
 声の響きから何かを感じ取ったのだろう。ミレイの顔からすっと表情が抜けた。
「さっきはいきなり泣かれてうやむやにされたけどさ。オレ……怒ってるんだぞ」
「そ……っか。そりゃ、そうやんね。記憶いじって帰ったもんね。うん、それは悪かった。記憶いじんのはアカンよね」
 ミレイは視線を下に逸らしかけ、手を強く握ると、目を合わせて消えそうに震える声でそう言った。
 何かあると視線を逸らしがちな彼女にしては頑張ったのだろう。でも、謝って欲しいのは記憶が云々と言う、そこだけじゃない。
「そりゃ、記憶をいじられたのも腹立ったけど、そこじゃねーだろ」
 先程から、ミレイはどんどん顔色を悪くしている。下手をすると倒れるんじゃないかという程に。
 けれど、これだけは、言っておかねばならなかった。
「好きな奴にいきなり消えられてみろ。どんだけ苦しい気持ちになったか。……分かるか? お前がいなきゃ、足りねーんだよ」
 真っ青になりながら聞いていたミレイは、固まった。数瞬後、止めていた息を浅く繰り返し、唾を飲み込んで、更に空飲み込みして、それでも何も言えなかったのか、訳の分からない呻き声を上げた。
「……嘘や」
「嘘じゃねぇよ」
「……夢や」
「一発殴ってやろうか?」
「孟宗竹!」
「妄想じゃねーのかよ!?」
 独り言っぽい呟きにいちいち否定してたら、最後に大ボケが飛んできた。それで元に戻ったかと思いきや、彼女は再び「……やっぱ夢かも」と言い出す。
 今度こそ、色んな意味を込めて、頭を軽く小突いてやった。流石に、いざ目の前にすると、全力でぶん殴る事は出来なかった。
「ったぁ!?」
「目は覚めたか?」
「……きっと多分おそらくメイビー」
 小突いた箇所を押さえるミレイの耳が、赤い。
「最初は殴りに来たんだけどな。こっち来て、確信した。お前、オレと来い」
「……は?」
「あっち帰ろうぜ。アルセウスが協力してくれる」
 だが、ミレイは首を横に振った。
「……や、流石に無理。わたしこう見えて23やし、オバサンやし」
「だからたまに大人っぽかったんだな……。ま、多分、帰ったらまた縮むだろ」
「学校あるし」
「お前がいなくても、謎の影武者がいてくれたんだろ?」
「……リィちゃん怒ってるし……」
 煮え切らない態度に腹が立って、気付いたら怒鳴っていた。
「あー、もう、グダグダ抜かすなっ! お前の弟にも許可は貰ってるんだ、お前は黙ってオレに攫われときゃ良いんだよ! 変に思い切りの良いお前はどうした!? オレが、お前を必要としてる。それで充分だろ?」
 ミレイは再び絶句。今度は思考停止ではなく、むしろ頭を忙しく働かせていると、グレン島での付き合いから雰囲気で読み取る。
 彼女は段々顔まで赤くしていき、しまいに呆れたように言った。
「……リィちゃん、プロポーズに聞こえんで?」
「この期に及んでボケるか。プロポーズだ。ついでに駆け落ちの勧めだ」
「あ、やっぱり……」
 きっと自分の顔も、今真っ赤だ。新たな黒歴史の一幕を足してしまった気がしてならない。
「んじゃ、しつこくてゴメンやけど、ホンマに後悔せぇへん? わたしが傍におって、ええのん?」
「くどい。そりゃ将来的に後悔するかもしれねーけど、だからと言って今から後悔したくねーよ。今はお前じゃなきゃダメなんだ」
「……そっか」
 何を思ったのか、ミレイは真剣な顔でペコリと頭を下げた。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
「……は?」
「うん、そこはちゃんと挨拶しとかな。気が済まん」
 って事は……。
「リィちゃんについてくよ。やったろうでないの。世界を股に掛けた駆け落ちってやつ」
「よっ、シャーン!」
「っ!! ……シャオさん!?」
 書類整理中のシャインの肩をシャオが思いっきりぶっ叩き、ものすごい勢いで叩かれたカントーの皇帝が目を丸くするのを、ミレイは半分他人事として見ていた。
 ……正確には、他人事として見ていたかったので半分現実逃避していた。ちなみにシャオに連行されたクチである。
 よもや、「最近シャインさん見てませんねー」などというのがとてつもなく不用意な発言だったとは、その時のミレイは夢にも思わなかったのだ。後悔先に立たず、とはよく言ったものである。
 まさかお仕事がとんでもなく溜まっていたから缶詰めになっていたとは、ポケモン世界の常識に疎いミレイには想像がつかなかった。今回で学んだ。取り敢えず、誰かを最近見掛けていない、なんて発言はしないようにしよう。お互いの為にならない。
 シャインがつんのめったので(シャオがどれだけの力で叩いたのかを想像しては負けなのか?)、彼の前に積み上がっていた書類の山が土砂崩れを起こしてミレイの足元まで広がっている。こんな事態を引き起こした責任の一端を感じているミレイは、責任など感じていなくてもやっただろうが、口喧嘩を始めた皇帝達を後目に床に落ちた書類を集める事にした。
 書類の束を集める以上、順番をごっちゃにしない為にも、書類には一通り目を通す事になる。もしかしたら守秘義務とかが発生するかもしれないが、そうなったらシャインは真面目だから即座にミレイの手を止めに来るだろう。珠姫ならあとから笑顔で脅してくるか、頭に強い衝撃を貰えるかもしれない。シャオの場合は……脳が想像する事を拒否した。何故だ。
 何はともあれ、書類を拾っていたミレイは、その中身が非常に興味深い事に気付いた。事業の計画やら何やらは、考えるだけなら面白いものだ。
 面白いから余計に、ミレイにも分かるようなずさんな穴や誤字脱字が、見ていられなかった。
 そこから先、ミレイの理性はしばし吹っ飛ぶ。
「ちょ、シャオさんいい加減に放してもらえませんか……! 仕事の邪魔しないで下さい」
「お前ちょっとは休憩しろよなー。ミレイにまで不審に思われるくらい引き篭もってるなんて不健康だぞ。倒れる前にやめるのが賢い大人ってもんだ」
「ミレイにまでって」
「心配されてたぞ? だから連れて来た」
「はぁ!?」
 ……唐突に素っ頓狂な声が耳を打ち、ハッと我に返った瞬間に何となく嫌な予感がして、ミレイはぐぎぎ、と書類から上半身を引き剥がした。ついうっかり、鞄から付箋を取り出して、あれやこれやのツッコミを入れてしまったのだが、よく考えたらそれはシャインの仕事をさらに増やしている事に他ならない。
 そのまま油の切れたブリキ人形が如き動きで二人を見たら、ばっちり視線が合ってしまって、頭の中が真っ白に爆発した。
「……」
「……」
 沈黙が、とっても、痛いデス。せめて怒って下さい。いやマジで。
 自分が何かの反応をしない事には永久にこのままになるかもしれないとの間違った脅迫観念から、きっかり三秒後、ミレイはがばっと頭を下げた。
「す、すんませんっしたっ!!!」
 もうなりふり構っていられない。ずばばばばっと書類をかき集め、机の上にどんどん積み上げ、もう一回頭を下げる。
「失礼しましたっ!」
 最早別の意味でまともな思考が吹き飛んだミレイは、そのまま執務室から逃げ出した。


 でもだからってこんな!

「いやー、やっぱ面白いな!」
「面白いな、じゃないですよ! まったく、また余計な仕事増えたじゃないですか!」
「付箋の事か? 無視ればいーじゃん」
「はがすのも労力が要るんですけど?」
「それもそうか。……ん?」
「今度は何ですか」
「いやー、ミレイちゃんやっぱおもしれーな」
「……?」


 衝動的に書いた短編。コラボ限定カップリングを作るのも面白いなーとか考えてた結果…だと、思います。

「ここが我が家でーす」
 欠伸を噛み殺しながら、ミレイが言った。
 周りに比べたら小さな一軒家の前だ。
「ん、よし、車ない。親留守や。遠慮なく連れ込める」
「連れ込めるて、おい。何か誤解招くぞ、その言い方。寝惚けんのも大概にせい」
 弟にそう突っ込まれる程度には、ミレイは眠そうだった。眠いだろ、という指摘は的を射ていた訳だ。
「んにゅ……」
 ミレイは目をこすった。
「寝ちゃったら、余計眠い……」
「そっけ」
 玄関前で立ち尽くす姉に代わり、弟が扉の鍵を開ける。……鍵を開ける?
 ミレイが気付いたように、説明した。
「ああ、こっちは結構物騒なんよ。この周りで空き巣に入られた事ないんってうちだけやんな?」
「あー、そうやな。ぼろいからしゃーない。向こうは入りたい放題なんやっけ?」
「おーう。入りたい放題、取りたい放題……」
 眠気のせいか、普段よりも間延びした調子で弟に答えるミレイ。
 ……何て物騒な世の中だ、と突っ込むべきなのか、こっちが長閑すぎると考えるべきなのか。
「そこ疑問やんな。殺人事件とかないんかな」
「聞いた事ない。リィちゃん、あったっけ」
「いや、こっちではそんな物騒なのか!?」
 予想以上の物騒さに思わず声を上げたら、ミレイは淡々と弟に返事した。
「ほら、なさそう」
「おー」
 そのままこちらを見て、一言。
「あ、大丈夫よ。日常茶飯事レベルやないから」
「いやいやそんな問題か!?」
「そんな問題。さ、ご近所さんに見っかる前に入ろうか」
 姉弟は家に上がるとそのまま二階へと上がっていった。
「んー。パソコンの部屋でえっかな?」
「やな。ねーちゃんの部屋、足の踏み場もないしな」
「えー。足の踏み場っつうか通り道はあるよ。ひたすら散らかってるだけで」
 そんな事を言いながら、ミレイは階段を上って左側にある部屋に入って行った。覗き込めば、入り口の半分に既に何かの書籍が積み置かれていて、狭い。机の上には、土砂崩れを起こしそうな程に色んな何かが積み上がっている。
「あ、アルセウスさんはこっちで。姉は上着を部屋に置いたら来ますから」
 ミレイの弟が手招きしているのは、階段を上がってまっすぐ進んだところにある部屋。そこはあまり物のない部屋で、正面にテレビがある事だけが分かった。
 階段の右側にも部屋があったが、その扉は閉ざされていた。
「……オレは?」
「どっちでも好きな方にどーぞ」
 明らかに何かを期待しているような食えない笑みで言って下さるミレイの弟。こいつはウタタの同類かもしれない。
 だが、せっかく機会をくれたのだからと、それに乗っかる事にした。


※鍵の下りは省略するかもしれません。よく考えたら合鍵ネタとか書いた事あるし。

◎一年目
「ミレイちゃんは今週末どうするの?」
「んー。困ってんの」
「困ってるの?」
「うん、困ってんの。今年は、どないしたもんかなって」
「今年は……。バレンタインの事? え、グリーン君にチョコあげるんじゃないの」
「……ンな事したら、丸バレやん」
「そりゃ、それがバレンタインなんだから」
「んー。んーー。チョコ大量に買ってくるしかないかなー」
「何でまた」
「いっぱい撒けばバレないっ!」
「ちょ、ミレイちゃん! 意味ない!」

◎二年目
「ミレイちゃんは今週末どうするの?」
「……ターちゃんが暇やったらええねんけどなぁ」
「へ?」
「ターちゃんが暇やったら、お菓子の作り方聞けるやん」
「去年に比べたら進歩だね。ん? またいっぱいばら撒くの?」
「うにゅうぅ」
「もーしもーし?(にやにや)」
「むー……。うん、よし。ばら撒こ。出血大サービス」
「……あー。からかいすぎちゃったか」
「……お菓子次第で」
「!」

カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
お役立ちリンク
Grungenote

転寝Lamp

Web Liberty
Twitter Bot

→説明ページはこちら
最新コメント
[06/03 木菟 伶]
[06/03 蒼埜]
プロフィール
HN:
木菟 伶
性別:
非公開
自己紹介:
夢見がちな学生。
バーコード
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]