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ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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「おう。おめでとう。んじゃ、親が帰ってくる前にちゃきちゃき荷造りしろ。ねーちゃんの夢にまで見た長期家出やで」
 けしかけただけはあって、ミレイの弟は姉の報告に淡々とこう返してきた。
「どうせ、例の紙束とか画材とか略本とか持ってくつもりやろ」
「……鞄にどんだけ詰まるかなぁ……。てか、向こうの世界にわたしの荷物、残ってるんやろか」
 図星だったらしく、ミレイはどこか遠い目をしながら言った。報告の時にものすごく壊れたテンションだったのが、一気に覚めた感じだ。
 夢心地だったのが、現実に引き戻されたのだろうな。
「どーせ、ねーちゃんの事やからまたこっちに顔出してくる気がしてなんねーんだよなー。だから、いざとなったら俺の部屋に隠してけば?」
「サンクスむぅ。恩に着る」
「まぁ、できれば一発で全部持ってけ、とは思うけど」
「ですよねー」
 やり取りを聞いていたアルセウスが、口を開いた。
「お前の荷物なら、お前のカイリューが持っているぞ」
「え、ホンマですか!? それは有難いです。ありがとうございます。て事は、向こうに着いてからの事に関してはあんまり考えなくても良し……っと」
 ミレイは再び、弟の部屋から出て彼女の部屋に戻ってきた。押し入れを開け、大きな鞄を取り出す。
「……聞いてーや、リィちゃん。こっちの世界、荷物がデータ化されへんねんで」
「え、マジか」
「マジも大マジ。せやから、こんなに大きな鞄持ったかて、リィちゃんが思とるほど物入らへんねん」
 どうやら、家の荷物全て持ち出すつもりかと勘繰ったのが、見透かされたらしい。
「貰いもんと創作資料と画材と略本はサルベージしたいなぁ」
「りゃくぼん?」
「攻略本の略ー。ポケモンの裏情報満載。わたし体力もセンスもないから、せめて知識でチートしてカバーしようかと」
 ああ、ポケモンセンターで売られていたアレか。
 思い返すと未だに鳥肌が立つ。オレの世界をそのまま再現したかのようなゲームが存在する事に。その証拠を目にした事に。
「……確かにゲームの世界かもしらんけどなー」
 ミレイは立ち尽くすオレを見上げて言った。
「それでもリィちゃんにとっては……そしてこれからのわたしにとっても、現実やで? 実在してるねんで? そこは信じて良いと思うねん」
「……」
「立ちっぱなしやと疲れるやろ、ベッドにでも座って待っててーな」
「あ、ああ」
 考えだすと頭がぐるぐるとして気持ち悪い。だから、素直にベッドに腰掛けた。
 ぼんやりと眺めていると、ミレイは何着かの服を詰め、アクセサリーを詰め、色鉛筆や筆箱を詰め、書物や紙束やファイルを詰め込み、更に色々と袋やらぬいぐるみやらまでギュウギュウと鞄に押し込めている。
「……そんなにいっぱい持って行くのか?」
「一応駆け落ちやし、もしかしたら二度と戻ってこられへんかもしれへんし」
「戻ってくるつもりかよ」
 何だか聞き捨てならない事を聞いたような気がする。
「夢の中でなら、戻ってこれんねん。帰り方探してた頃からそうやったから、きっと今回も夢の中でなら大丈夫やと思うねんなー。んで、根性出したら、夢の筈やのに何でか知らんけど、普通の鞄くらいの荷物なら何とか持って帰ってこれるっぽいねんよね。起きた時、めっちゃ疲れてんねんけど」
 鞄のジッパーを閉めるべく奮闘しながら、ミレイはさらりととんでもない事を言う。
「でも、所詮、わたしにとっては夢や。そうやのって、分かんねん。何でか知らんけどな。目を覚ませば、また寝た場所に戻ってきてんよ。たとえ夢ん中で世界の壁を越えてたって、な」
 パンパンに膨れ上がった鞄をいつものように右肩に掛け、ミレイは立ち上がった。
「ほな、行こか。懐かしのポケモン世界」
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