ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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そんなこんなで、今は皆で玄関に来てる。靴を履かなきゃいけないからな。
ミレイは弟と別れを惜しんでいる。
「んじゃ、行ってくんね。……また、喋ろうな」
「あー、はいはい。どーせ寂しくなってもどうにでもできるやろ? んな凹むな」
「……最後にセクハラして良い?」
「やめれ。……こらっ、やめろっつったろうが! ええ加減にしろや!」
ミレイは弟をギュッと抱き締めた。弟の方は至極迷惑そうにしていたが、気持ちは分からないでもなかったのだろう、抵抗もしていなかった。
オレはと言えば胸がモヤモヤしたが、オレがナーバスになった時にミレイが何も言わずに横に居てくれた事とかを思い出すと、今回はぐっと堪えようと思えた。
やっぱり、一番の強敵はこいつだというオレの見込みは合ってたんじゃねーかとも考えたけどな!
ミレイは異常なまでにブラコンだと思う。オレもシスコンと言われた事はあるが、ミレイのそれはちょっと行き過ぎだ。
「……ごめん、むぅちゃん、リィちゃん。お願いします、えーと……碓井さん?」
「一般人はいないからアルセウスで構わぬ。もう良いのだな?」
ミレイは頷いた。
「善は急げって言いますし。思い悩む前にやっちまえって言いますし」
ミレイはそういうと玄関先から降りて、靴を履いた。
「そうか。では、行くぞ」
一度経験した、眩しい光が辺りを包む。
「……わたしは、何を?」
光が消えた跡には、一人の女性。
「何をって……買い物から帰ってきたんやろ?」
満は、そう声を掛けた。
「……あ、あー。そうやったね。ほな、勉強の続きしてくるわ。何でアンタにつきあってポケモンセンターなんかに行ったのか、わたしの正気が疑われるけど、とりま遅れた分は取り返さな」
「たまには息抜きした方が……」
「ふんっ、サボることしか頭にないアンタなんかに言われてもな」
二階に上がっていく「姉」を見送りながら、満は嘆息した。
「……あー。俺から焚き付けておいて何だけど、やっぱクルものがあんなー。まぁ、次は俺かもしれんけど」
何気に意味深な事を呟き……彼は姉が荷造りをしている間、アルセウスに仄めかされた未来に思いを馳せる。
「どうしたもんかなー。俺は別に、姉ちゃんと違ってこっちにも未練ありまくんねんけどな……」
「……ああ、ただいま」
ミレイの前にいるアルセウスは、今は本来の姿。それを見て、彼女は感慨深げにそう呟いた。
俺にとっては見慣れた、彼女の本来の年よりも若い姿で。
「お、リィちゃんも元に戻っとる。もしかして、わたしも若なってる? 身長差同じ感じやし、縮んでるかな」
「ああ、そうだな」
「そっかー。ちょっと安心した。別に年下と付き合うのは問題ないけど、身長差がなくなってると甘えにくい」
堂々とそんな事を言うミレイは、何かを吹っ切ったようだった。
「甘えにくい?」
「……んにゅう」
一瞬躊躇う素振りを見せ、けれど彼女はオレの腕を掴み、肩に頭を乗せる。
「要するにこういう事がやりにくいねんって事……。うぁー恥ずかし……」
恥ずかしいからと言ってぐりぐりと顔を伏せ、押し付けてくるのは逆効果だと思う。けど、言ったら離れていきそうだな。
そんな事を考えていたら、いきなり声を掛けられた。
「ミレイちゃん、グリーン君、おかえり! お熱いね~、ひゅーひゅー!」
「お、お熱くて悪かったな!?」
「ひゅーひゅー言うない!! って、ターちゃん!?」
バッと擬音のつく勢いでオレから離れたミレイは、ウタタを見て目を見開いた。
「ターちゃんもグルやったんか!?」
「確かにグリーン君けしかけたり送り込んだりしたけど、ちゃんと約束は守ったんだからね! 彼は自力でミレイちゃんの事思い出したよ?」
「……グレン島で?」
ミレイの訊ね返した内容に、一瞬息を止めてしまった。
「何故分かった?」
「えっ、そうだったんだ!?」
そんな事は初耳と言わんばかりのウタタも声を上げたが、ミレイはそれは聞こえていないようだった。
「ま、マジか……。いや、昨夜、グレン島にいる夢を見てさ。そこにリィちゃんが登場したから……ね?」
そういえばミレイの弟がそんな事を言っていたが、グレン島の夢だったのか。
「あんまりにも思い詰めてるようだったから、思わず話し掛けちゃったって夢やったんやけどね?」
……ん?
「『諦めてしまえば良いのに。もういない人の事なんて、忘れてしまえば良いよ』ってか?」
今度はミレイが息を呑んだ。
「マジで?」
「マジだな」
「うひゃああぁ。成程。ごめん、ターちゃん。自業自得やったわ」
謝られたウタタはと言えば、にやにやとしている。
「気になるなぁ」
「ネタにされる事は自重します!」
「つまりはそういう事なんだね!」
「うにぅ……」
「愛の力は偉大だね~」
「あぅ……」
ひとしきりミレイをいじったら気が済んだのか、ウタタは笑顔からにやつきを消した。
「はい、ミレイちゃんのポケモン。リュウガ……だったよね? カイリューが鞄持っててくれてるから」
「わ、あんがと! これで生活できるっ!」
モンスターボールを受け取るミレイもまた、笑顔だ。
だがそれを聞いたウタタはまたにやにやとしだし……何故かオレをちらっと見た。
「生活……こっちでするんだね?」
「うん、問題はどこに住むかって事やけど、当分は今まで通り……」
「こらこら。それじゃ意味ないでしょ! ……なぁ、グリーン君?」
これはもしや……。
「君ん家は空き部屋無いのかい? もしくはジムの居住空間とか?」
ああ、やっぱりそういう事か。
ウタタにいじられるのは恥ずかしいが、今はありがたくそれに乗らせてもらうとしよう。
「そうだな、オレの家は……」
さて、ミレイ。覚悟はできてる筈だよな?
今度こそ、逃がさないぞ。
逃避行~完~
ミレイは弟と別れを惜しんでいる。
「んじゃ、行ってくんね。……また、喋ろうな」
「あー、はいはい。どーせ寂しくなってもどうにでもできるやろ? んな凹むな」
「……最後にセクハラして良い?」
「やめれ。……こらっ、やめろっつったろうが! ええ加減にしろや!」
ミレイは弟をギュッと抱き締めた。弟の方は至極迷惑そうにしていたが、気持ちは分からないでもなかったのだろう、抵抗もしていなかった。
オレはと言えば胸がモヤモヤしたが、オレがナーバスになった時にミレイが何も言わずに横に居てくれた事とかを思い出すと、今回はぐっと堪えようと思えた。
やっぱり、一番の強敵はこいつだというオレの見込みは合ってたんじゃねーかとも考えたけどな!
ミレイは異常なまでにブラコンだと思う。オレもシスコンと言われた事はあるが、ミレイのそれはちょっと行き過ぎだ。
「……ごめん、むぅちゃん、リィちゃん。お願いします、えーと……碓井さん?」
「一般人はいないからアルセウスで構わぬ。もう良いのだな?」
ミレイは頷いた。
「善は急げって言いますし。思い悩む前にやっちまえって言いますし」
ミレイはそういうと玄関先から降りて、靴を履いた。
「そうか。では、行くぞ」
一度経験した、眩しい光が辺りを包む。
「……わたしは、何を?」
光が消えた跡には、一人の女性。
「何をって……買い物から帰ってきたんやろ?」
満は、そう声を掛けた。
「……あ、あー。そうやったね。ほな、勉強の続きしてくるわ。何でアンタにつきあってポケモンセンターなんかに行ったのか、わたしの正気が疑われるけど、とりま遅れた分は取り返さな」
「たまには息抜きした方が……」
「ふんっ、サボることしか頭にないアンタなんかに言われてもな」
二階に上がっていく「姉」を見送りながら、満は嘆息した。
「……あー。俺から焚き付けておいて何だけど、やっぱクルものがあんなー。まぁ、次は俺かもしれんけど」
何気に意味深な事を呟き……彼は姉が荷造りをしている間、アルセウスに仄めかされた未来に思いを馳せる。
「どうしたもんかなー。俺は別に、姉ちゃんと違ってこっちにも未練ありまくんねんけどな……」
「……ああ、ただいま」
ミレイの前にいるアルセウスは、今は本来の姿。それを見て、彼女は感慨深げにそう呟いた。
俺にとっては見慣れた、彼女の本来の年よりも若い姿で。
「お、リィちゃんも元に戻っとる。もしかして、わたしも若なってる? 身長差同じ感じやし、縮んでるかな」
「ああ、そうだな」
「そっかー。ちょっと安心した。別に年下と付き合うのは問題ないけど、身長差がなくなってると甘えにくい」
堂々とそんな事を言うミレイは、何かを吹っ切ったようだった。
「甘えにくい?」
「……んにゅう」
一瞬躊躇う素振りを見せ、けれど彼女はオレの腕を掴み、肩に頭を乗せる。
「要するにこういう事がやりにくいねんって事……。うぁー恥ずかし……」
恥ずかしいからと言ってぐりぐりと顔を伏せ、押し付けてくるのは逆効果だと思う。けど、言ったら離れていきそうだな。
そんな事を考えていたら、いきなり声を掛けられた。
「ミレイちゃん、グリーン君、おかえり! お熱いね~、ひゅーひゅー!」
「お、お熱くて悪かったな!?」
「ひゅーひゅー言うない!! って、ターちゃん!?」
バッと擬音のつく勢いでオレから離れたミレイは、ウタタを見て目を見開いた。
「ターちゃんもグルやったんか!?」
「確かにグリーン君けしかけたり送り込んだりしたけど、ちゃんと約束は守ったんだからね! 彼は自力でミレイちゃんの事思い出したよ?」
「……グレン島で?」
ミレイの訊ね返した内容に、一瞬息を止めてしまった。
「何故分かった?」
「えっ、そうだったんだ!?」
そんな事は初耳と言わんばかりのウタタも声を上げたが、ミレイはそれは聞こえていないようだった。
「ま、マジか……。いや、昨夜、グレン島にいる夢を見てさ。そこにリィちゃんが登場したから……ね?」
そういえばミレイの弟がそんな事を言っていたが、グレン島の夢だったのか。
「あんまりにも思い詰めてるようだったから、思わず話し掛けちゃったって夢やったんやけどね?」
……ん?
「『諦めてしまえば良いのに。もういない人の事なんて、忘れてしまえば良いよ』ってか?」
今度はミレイが息を呑んだ。
「マジで?」
「マジだな」
「うひゃああぁ。成程。ごめん、ターちゃん。自業自得やったわ」
謝られたウタタはと言えば、にやにやとしている。
「気になるなぁ」
「ネタにされる事は自重します!」
「つまりはそういう事なんだね!」
「うにぅ……」
「愛の力は偉大だね~」
「あぅ……」
ひとしきりミレイをいじったら気が済んだのか、ウタタは笑顔からにやつきを消した。
「はい、ミレイちゃんのポケモン。リュウガ……だったよね? カイリューが鞄持っててくれてるから」
「わ、あんがと! これで生活できるっ!」
モンスターボールを受け取るミレイもまた、笑顔だ。
だがそれを聞いたウタタはまたにやにやとしだし……何故かオレをちらっと見た。
「生活……こっちでするんだね?」
「うん、問題はどこに住むかって事やけど、当分は今まで通り……」
「こらこら。それじゃ意味ないでしょ! ……なぁ、グリーン君?」
これはもしや……。
「君ん家は空き部屋無いのかい? もしくはジムの居住空間とか?」
ああ、やっぱりそういう事か。
ウタタにいじられるのは恥ずかしいが、今はありがたくそれに乗らせてもらうとしよう。
「そうだな、オレの家は……」
さて、ミレイ。覚悟はできてる筈だよな?
今度こそ、逃がさないぞ。
逃避行~完~
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