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ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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「へー。幽霊? でも、それは、今の段階では単なる噂の域を出ない。そうだろう?」
 最近、サンヨウシティには幽霊が出没するらしい。
 何でも、まだ年若い、少女のような幽霊だそうだ。
 噂を聞いたマキナは、至って普通に、そう返した。
「実際に会って調べてみない事には、何とも言えないのではないかな?」

「……おや」
 他人にはあまり係わろうとしないマキナだが、流石に目の前の出来事は、彼女の目にも少し奇妙に映った。
 居候している先、マコモの住むアパートから、今まで見た事のない少女が出てきたのだ。
 しかも、物音一つ……扉の音さえさせずに。
 少女は、フラフラとどこか覚束ない足取りで歩いていく。
「尾けてみるかな?」
 怪しさ大爆発の見慣れぬ不思議な少女は、何となく人間的な「何か」に欠けているように思えて、それがいたくマキナの気を惹いた。
 黒いニットの上着に、黒い短めのスカート。ハイソックスも、靴も黒い。そんな、黒っぽい服を着た少女は、そのいかにも女の子らしい服装に反して、全くの手ぶらであった。そして、服から覗く細い左手首には、服装とはこれまたそぐわない、ごつい機械が嵌められていた。
 少女は彷徨う。フラフラと。
 やがて彼女は、出てきたのとはまた別の家、マキナが空き家と認識していたそこに、ノックも何もせずに、フラフラと、物音一つ立てる事なく入っていった。
 マキナは少し離れた所から空き家を観察した。
 だが、いつまで経っても、家に電気の点く様子はない。それどころか、音一つしない。
 窓から中を覗き込んでも、誰もいない。ついに踏み込んでみたが、そこはやはり、人の気配などない空き家だった。入って行った筈の少女は影も形もなく。
「ふむ。つまり、彼女が噂の『幽霊』か」
 マキナは、ライブキャスターの録画停止ボタンを押した。
 傍から見れば、それはおかしな光景だったであろう。フラフラ歩く不審者が二人、一人は本当にフラフラと、一人はもう一人をライブキャスターに撮りながら、街を徘徊していたのだから。

「おかえり、どうだった?」
 マコモは、部屋に唐突に現れた『幽霊』に話し掛けた。
「まだ疲れます……」
 ミレイは、ヘロヘロという形容が似合いそうな口調で答える。
「っていうか、やっぱり途中で実体までは維持できなくなって、薄らいじゃいますね……。何か、今頃はこの街で幽霊の噂が立ってるんじゃないかって心配ですよ……。街に出なきゃいけませんか?」
「知らない場所にも行けるようにするのが目標なのよ!」
「……さいですか……。今日はもう集中力切れたんで、帰りますね」
 ミレイは左手の腕輪からごつい機械を外すと、それをマコモに渡した。
「お疲れ様! また明日までに、調整しておくね」
「できればそれももうちょっとスリムにして下さい……」
 機械から手を話した瞬間、ミレイの姿は掻き消える。
「あらら。今日はよっぽどお疲れなのね。無理させすぎちゃったかしら」
 マコモは呑気に呟くと、鼻歌を歌いながらラボに向かった。

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 何とか人混みを掻い潜り(チャンピオン戦直後やジムリーダー就任時のゴタゴタした日々の経験が再び役に立つ日が来るとは思わなかった)、ポケモンセンターを出る。
 確か、ポケモンセンターの外には、どこかの野外カフェのようにテーブルや椅子の並べられている場所があった。先程の女性が、言葉の通り『座って』待っているとすれば、そこだろうと思ったのだ。
 実のところ、その女性には違和感がある。ミレイはもう少し背が低かったように思うのだ。それに、髪だって、あんなに短くしていなかった。
 それでも彼女はミレイと同じような響きの声で同じような喋り方をし、『グリーン』にそっくりな『リィちゃん』の事を、口にした。
 テーブルが幾つか並ぶ中で、目当ての女性は一人、ぼんやりとポケモンセンターの入り口を……つまり、こちらを眺めながら、座っていた。
 顔を見れば、眼鏡を掛けているせいかやたら老け込んでいるように見えたが、違和感も強くなった代わりに確信めいた思いが湧き上がる。彼女だ。もし違っていたとしても、血縁である可能性は高い。
 近付いていくと、彼女は途中でこちらに気付き、目を見張った。
「……ミレイ?」
 話し掛けると、さっと目を伏せる。その仕草さえ、ミレイに似ている女性。
 彼女はゆっくりとではあったが再び視線を上げ、眩しそうな顔をした。
「えぇと、どちらさんで? ってか、人違いやありませんか?」
「オレの事、忘れたのかよ!? オレは……っ!」
 怒鳴ろうとして、はたと、アルセウスに言われた事を思い出す。
『お前も、大木戸と名乗る分には構わぬが、グリーンなどとは言わない方が良いだろう。こちらでは、それは人につける名前ではない』
 名前を言えなくては、どうにもならない。
「……お前も、忘れたのかよ」
 半ば諦め、自棄になって呟くと、彼女は目を細めた。
「わたしの知り合いに、そっくりな人おるんですけど。彼はもっと若いんですよね」
「は? 誰の事だ? それを言うなら、お前だって随分老けたじゃねーか」
「んにゃ、わたしは元々こんなですよ? でも、リィちゃんなら、まだ二十歳になってなかった筈で」
「あったりめーだ。オレ、十八だぞ」
「……はぇ?」
 会話が、噛み合いそうで、噛み合わない。どうして彼女は、目を丸くするのだろう。
「あんさん、ちょい鏡見てきた方がええんちゃいますか」
「何だって……?」
「ってか、マジで、ホンモンの、リィちゃん……? 何か成長してるけど? っつか、ここ、ポケモン世界やないけど……? わたしの事も覚えてない筈やし……」
「おーう。お前、よくもあんな事してくれたな」
 そういえば、こいつがミレイなら、一発ぶん殴る為に来たんだった。そう思って見るも、彼女は何故か、目を潤ませていて。
「って、おいっ!? 何でそこで泣くんだよ!?」
「……ぅ、……ぐすっ……」
「オレ、まだ殴ってないだろ……! ってか、卑怯だぞ!」
 ああぁ、こんなじゃ、殴りたくても殴れねぇ!
 仕方がないので、ハンカチを出してやる。
「ご、ごめんなさ……」
「あーもういいから、泣くな!」
 そしてそんなところへ、第三者の声が降ってきたのだった。
「どちらさまですか」
 氷のように冷たい、低く這うような声。
 そう言えば、ミレイは、誰か……背の高い男性と、来ていた。
「……むぅちゃん」
 ミレイが呟く。こんな事になる前も、よく口にしていた名前を。嫉妬を抱かずにはいられなかった名前を。
 不利な状況だと分かっていながら、それでもつい戦闘態勢で振り返ると、ペットボトルを持った背の高い青年が険しい顔でこちらを見ていた。
 余計に不利になると思いながらも睨み付けたら、彼は再び口を開いた。
「何、人の姉、泣かせてるんですか」
 背後でミレイが何か言っていたが、それは耳を素通りした。
 こいつは今、何て言った? 姉? ミレイが?
 ……とてつもない勘違いをしていた事に、ようやく気付いた瞬間、目が点になった。

 まさかポケモンセンターに行くだけで、こんなに消耗するとは思わなかった。
 人は多いし、車が規制されずにすぐ近くを走っていて危ない。信号とやらがあるようでも、それを無視する人の多い事!
 道行く人々の顔は何となく暗いか、薄っぺらい明るさを不自然に貼り付けたような印象で、何となく歪だ。
 やっと辿り着いたポケモンセンターは、トレードマークである筈の赤い屋根は持たず、むしろどこかのフレンドリィショップのような雰囲気を醸し出していた。
 足を踏み入れて確信する。ああ、本当に、ここは店だ。ポケモングッズが棚に並び、親子連れや若いカップルがそこここに溢れている。
 ふと目に留まったのは、本棚。そこに並べられた本。
『ポケットモンスター完全クリアガイド』
『カントー攻略&全国図鑑完成はこの一冊で!』
 飛び込んできた文字はあまりに衝撃的で、一瞬、何の事だろうかと思った。
 サンプル、とシールのついているものを手に取る。頭のどこかでは大きく警鐘が鳴り響いていたけれど、震える手は勝手に中を読むべくページを繰っていた。
『ポケモンの存在は、……おとぎ話のようなものだから』
 何故、ウタタが一瞬言いよどんでいたのか、ようやく分かった。
 この世界では、ポケモンは実在しない。ゲームの中の架空の存在であり、当然自分も……。
「あ、あの……!」
 呆然としていた所に、声を掛けられる。
 振り向くと、小さな箱型の機械を持った人々が、どよめいた。
「うわー、超そっくり!」
「レイヤーだって普通ここまで似ないだろ!」
「これは絶対写メらなきゃ損だよ」
 パシャパシャと、こっちに何の説明もなく、彼等は小型の機械……恐らくはこの世界のカメラで、写真を撮ってくる。そんな声の向こうから、遠巻きに見ているであろうカップルの会話も聞こえてきた。
「何か向こうで人集まってんで? グリーンさんに似てる人がおるんやって。見に行かへん?」
「……ええわぁ。わたしは行かへん。今、グリーンさんにそっくりな人なんて、見たってしゃーない」
「会いたいんじゃねーの? 今だって、揃えようとしてんの、彼の手持ちやろ」
「そりゃあ逢いたいけど、そっくりさんに会ったって虚しいだけやん。わたしが逢いたいのは、リィちゃんだけやの」
「そういうもんか……。んじゃ、一旦、外出てよか。俺、そこのコンビニで何か飲むもん買ってくるわ」
「むぅが自分から何か買いに行くなんて珍しいな。分かった。そこで座って待ってる」
 思い焦がれたその声は、聞き慣れた固有名詞をあっさりと紡ぐ。
 背の高い青年と、青年に連れられた女性が店を出ていくのが人垣の向こうに見えた。

 彼女は、彼が何を言っても、微笑を浮かべて話を聞き、相槌を打ってあげていた。
 たとえ彼が、どんな女の子と、どこに行って遊んできたかというような話であっても。
 彼女は決して彼に媚びるような態度は見せなかった。
 彼女は彼が遊びに誘っても、遠慮し続けた。
 ありていに言って、彼女は彼に気がないようにも見えた。

「それでいいの」
 訊ねれば、彼女は普通に頷く。
 気付くものが見れば、一目瞭然だった。
 彼女が彼に恋していそうな事は。
「釣り合いませんし、自分を安売りしたくもありませんから」
 傍で見ていられれば、それで良い。
 彼女はそういって、痛々しい笑みを浮かべた。
「そう、なら」
 彼女に取引を持ちかける。
 自分と付き合う気はないかと。
「すみません、恋愛できるほど器用じゃないんです」
 浮気はしたくないと、断るだろう事は予想済み。
「恋愛感情なんてなくたっていい。形だけの結婚で構わない」
 彼の幼馴染である自分と共にいれば、いつまでも彼を見続ける事ができるのだと。
 悪魔のように囁けば、彼女は瞳を揺るがせた。
「いわば、同盟関係だ」
 あの情けない男を観察し続ける為の。
 彼は、何と思うだろう。
 いつまでも煮え切らないから、せっかくの、彼に誠実で上玉な女を取られてしまうのだ。

 最初に感じたのは息苦しさだった。何だこの人ごみは。何だ、この空気の臭いは。見渡す限りの人、人、人。ポケモンの大量発生だって、こんな密度にはなりゃしない。
「ふむ。ここに辿り着いたか」
 どこかで聞いたような、でも聞き覚えのないような声がすぐ背後からして、ぎょっとして振り返ると、そこには白い上着と濃い灰色のズボンに身を包んだ黒髪の青年がいた。
「ここにはポケモンはいないから、人間の姿を借りた。さて、行くか」
 その言葉で、相手がアルセウスである事を知る。
「我の……と言ったら、ここでは浮くのだったな。俺の事を、アルセウスとは呼ぶなよ。そうだな…、碓井とでも名乗っておくか。お前も、大木戸と名乗る分には構わぬが、グリーンなどとは言わない方が良いだろう。こちらでは、それは人につける名前ではない」
「ポケモンはいない、名前に制約がある、どんな世界だよ、ここは!」
 アルセウスは身振りで抑えるように伝えてきた。
「正直、大木戸という名字でさえ、お前が名乗ると大変な事になりそうな気がするのだがな。特に、これから行こうとする場所を考えたら」
「当てがあるのか?」
「お前に纏わりつく気配と同じものを、向こうから感じる。だが、あそこにあるのは、ポケモンセンターだ」
 その言葉を聞いて、色々と拍子抜けした気分になった。ミレイはトレーナーの端くれなのだから、そりゃあポケモンセンターにいてもおかしくはない。だが、それだと矛盾する点もある。
「ポケモンセンターの何がそんなに恐ろしいんだよ。っつうか、ポケモンセンターあるんなら、ポケモンいるって事じゃねーの?」
「……行けば分かる。とにかく、下の名前を聞くくらい図々しいヒトがいるかもしれぬ。何か考えておけ。漢字で書けそうな名前をな」
 アルセウスは、事もあろうか超高密度の人の塊に突き進んでいく。見失ったら最後、見付けられる自信がない。この人ごみの中をはぐれずに突き進む自信もあまりないが。
 それにしても、この世界の人は、背が低いのだろうか? 何となく自分の視点が高くなったような錯覚を覚えた。

・珠姫さんとのコラボ的な話では兄がいっぱいいる。
・そこから派生したネタは、コラボカテゴリに放り込む。ので、ここではこれ以上書かない。

・逆に木菟が単体でネタを使ってる時は、兄はジムリーダーのグリーン一人。
・リオンは研究者肌かもしれない。いわゆるシゲルポジション?アニメ見てないから何とも言えないけど←
・兄が微妙に黒歴史引きずってたりしたら、振り回されていそうだ。
・ある意味半オリキャラになるので、へたれてしまっても言い訳できる←
・グリーンの瞳の色は、未定。よく緑色設定の所を見掛けるし、それくらいしないと外見的見分けがつかないだろうなぁとも思うけど、公式では緑じゃないのも確かだし。
・リオンの瞳の色は榛色だよ!

 …また何かあれば追記するか記事を書く、かも。

註:木菟の所有するホワイトのトレーナーのリオンではないです。

「ねぇねぇリィちゃん」
「ん? 何だよ」
「リィちゃんは本来ジムリーダーやないんよね?」
「そうだな。ジムリーダーは兄貴達がやってるな」
「兄貴…達? え、もしかしていっぱいおんの」
「まず、ジムリーダーやってる上二人がいるだろ。んで、研究やってる兄貴もいるし…。ま、オレは末っ子だからな」
「へー。(上二人はきっとグリーンさんとグリーン君で、研究やってるのはシゲル君かなー?)…リィちゃんは何かやってんの」
「いや、オレは特に何もしてない。敢えて言うなら、留守番役というか。家の用事やったり…」
「ジムリーダー代理やったり?」
「……あれは本当にたまたまだっての。よりにもよって兄貴が両方不在だとか、滅多にねーんだからな。大体オレ、兄貴達ほど強くねーし」
「でも、特に弱くもないと思うけど」
「あれは、ジム戦用のポケモンがジムに残ってたからだよ。オレのポケモンじゃねえ」
「ふーん。…あのレベルのポケモンに、言う事ちゃんと聞いてもらえるんやー。やっぱ、弱ないやん」
「オレが強いんじゃねーっての。神経質な方の兄貴が、万一の時にオレの言う事も聞くように躾けてあったらしいんだ。立体ホログラムの勉強もしてるみたいだし…どんだけ神経質なんだよ」
「リィちゃんは謙虚やねぇ。元ジョウトチャンピオンとして言ったげる。リィちゃんなら十分ジョウトチャンピオンくらい狙えるよ。カントーは無理かもしれんけど」
「いや、ジョウトもカントーもチャンピオン同じだろ…」
「だって、カントーでリーグ挑戦権手に入れよう思たら、トキワジムのバッジも必要やで?」
「あー…。言いたい事は何となく分かった」

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