ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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何とか人混みを掻い潜り(チャンピオン戦直後やジムリーダー就任時のゴタゴタした日々の経験が再び役に立つ日が来るとは思わなかった)、ポケモンセンターを出る。
確か、ポケモンセンターの外には、どこかの野外カフェのようにテーブルや椅子の並べられている場所があった。先程の女性が、言葉の通り『座って』待っているとすれば、そこだろうと思ったのだ。
実のところ、その女性には違和感がある。ミレイはもう少し背が低かったように思うのだ。それに、髪だって、あんなに短くしていなかった。
それでも彼女はミレイと同じような響きの声で同じような喋り方をし、『グリーン』にそっくりな『リィちゃん』の事を、口にした。
テーブルが幾つか並ぶ中で、目当ての女性は一人、ぼんやりとポケモンセンターの入り口を……つまり、こちらを眺めながら、座っていた。
顔を見れば、眼鏡を掛けているせいかやたら老け込んでいるように見えたが、違和感も強くなった代わりに確信めいた思いが湧き上がる。彼女だ。もし違っていたとしても、血縁である可能性は高い。
近付いていくと、彼女は途中でこちらに気付き、目を見張った。
「……ミレイ?」
話し掛けると、さっと目を伏せる。その仕草さえ、ミレイに似ている女性。
彼女はゆっくりとではあったが再び視線を上げ、眩しそうな顔をした。
「えぇと、どちらさんで? ってか、人違いやありませんか?」
「オレの事、忘れたのかよ!? オレは……っ!」
怒鳴ろうとして、はたと、アルセウスに言われた事を思い出す。
『お前も、大木戸と名乗る分には構わぬが、グリーンなどとは言わない方が良いだろう。こちらでは、それは人につける名前ではない』
名前を言えなくては、どうにもならない。
「……お前も、忘れたのかよ」
半ば諦め、自棄になって呟くと、彼女は目を細めた。
「わたしの知り合いに、そっくりな人おるんですけど。彼はもっと若いんですよね」
「は? 誰の事だ? それを言うなら、お前だって随分老けたじゃねーか」
「んにゃ、わたしは元々こんなですよ? でも、リィちゃんなら、まだ二十歳になってなかった筈で」
「あったりめーだ。オレ、十八だぞ」
「……はぇ?」
会話が、噛み合いそうで、噛み合わない。どうして彼女は、目を丸くするのだろう。
「あんさん、ちょい鏡見てきた方がええんちゃいますか」
「何だって……?」
「ってか、マジで、ホンモンの、リィちゃん……? 何か成長してるけど? っつか、ここ、ポケモン世界やないけど……? わたしの事も覚えてない筈やし……」
「おーう。お前、よくもあんな事してくれたな」
そういえば、こいつがミレイなら、一発ぶん殴る為に来たんだった。そう思って見るも、彼女は何故か、目を潤ませていて。
「って、おいっ!? 何でそこで泣くんだよ!?」
「……ぅ、……ぐすっ……」
「オレ、まだ殴ってないだろ……! ってか、卑怯だぞ!」
ああぁ、こんなじゃ、殴りたくても殴れねぇ!
仕方がないので、ハンカチを出してやる。
「ご、ごめんなさ……」
「あーもういいから、泣くな!」
そしてそんなところへ、第三者の声が降ってきたのだった。
「どちらさまですか」
氷のように冷たい、低く這うような声。
そう言えば、ミレイは、誰か……背の高い男性と、来ていた。
「……むぅちゃん」
ミレイが呟く。こんな事になる前も、よく口にしていた名前を。嫉妬を抱かずにはいられなかった名前を。
不利な状況だと分かっていながら、それでもつい戦闘態勢で振り返ると、ペットボトルを持った背の高い青年が険しい顔でこちらを見ていた。
余計に不利になると思いながらも睨み付けたら、彼は再び口を開いた。
「何、人の姉、泣かせてるんですか」
背後でミレイが何か言っていたが、それは耳を素通りした。
こいつは今、何て言った? 姉? ミレイが?
……とてつもない勘違いをしていた事に、ようやく気付いた瞬間、目が点になった。
確か、ポケモンセンターの外には、どこかの野外カフェのようにテーブルや椅子の並べられている場所があった。先程の女性が、言葉の通り『座って』待っているとすれば、そこだろうと思ったのだ。
実のところ、その女性には違和感がある。ミレイはもう少し背が低かったように思うのだ。それに、髪だって、あんなに短くしていなかった。
それでも彼女はミレイと同じような響きの声で同じような喋り方をし、『グリーン』にそっくりな『リィちゃん』の事を、口にした。
テーブルが幾つか並ぶ中で、目当ての女性は一人、ぼんやりとポケモンセンターの入り口を……つまり、こちらを眺めながら、座っていた。
顔を見れば、眼鏡を掛けているせいかやたら老け込んでいるように見えたが、違和感も強くなった代わりに確信めいた思いが湧き上がる。彼女だ。もし違っていたとしても、血縁である可能性は高い。
近付いていくと、彼女は途中でこちらに気付き、目を見張った。
「……ミレイ?」
話し掛けると、さっと目を伏せる。その仕草さえ、ミレイに似ている女性。
彼女はゆっくりとではあったが再び視線を上げ、眩しそうな顔をした。
「えぇと、どちらさんで? ってか、人違いやありませんか?」
「オレの事、忘れたのかよ!? オレは……っ!」
怒鳴ろうとして、はたと、アルセウスに言われた事を思い出す。
『お前も、大木戸と名乗る分には構わぬが、グリーンなどとは言わない方が良いだろう。こちらでは、それは人につける名前ではない』
名前を言えなくては、どうにもならない。
「……お前も、忘れたのかよ」
半ば諦め、自棄になって呟くと、彼女は目を細めた。
「わたしの知り合いに、そっくりな人おるんですけど。彼はもっと若いんですよね」
「は? 誰の事だ? それを言うなら、お前だって随分老けたじゃねーか」
「んにゃ、わたしは元々こんなですよ? でも、リィちゃんなら、まだ二十歳になってなかった筈で」
「あったりめーだ。オレ、十八だぞ」
「……はぇ?」
会話が、噛み合いそうで、噛み合わない。どうして彼女は、目を丸くするのだろう。
「あんさん、ちょい鏡見てきた方がええんちゃいますか」
「何だって……?」
「ってか、マジで、ホンモンの、リィちゃん……? 何か成長してるけど? っつか、ここ、ポケモン世界やないけど……? わたしの事も覚えてない筈やし……」
「おーう。お前、よくもあんな事してくれたな」
そういえば、こいつがミレイなら、一発ぶん殴る為に来たんだった。そう思って見るも、彼女は何故か、目を潤ませていて。
「って、おいっ!? 何でそこで泣くんだよ!?」
「……ぅ、……ぐすっ……」
「オレ、まだ殴ってないだろ……! ってか、卑怯だぞ!」
ああぁ、こんなじゃ、殴りたくても殴れねぇ!
仕方がないので、ハンカチを出してやる。
「ご、ごめんなさ……」
「あーもういいから、泣くな!」
そしてそんなところへ、第三者の声が降ってきたのだった。
「どちらさまですか」
氷のように冷たい、低く這うような声。
そう言えば、ミレイは、誰か……背の高い男性と、来ていた。
「……むぅちゃん」
ミレイが呟く。こんな事になる前も、よく口にしていた名前を。嫉妬を抱かずにはいられなかった名前を。
不利な状況だと分かっていながら、それでもつい戦闘態勢で振り返ると、ペットボトルを持った背の高い青年が険しい顔でこちらを見ていた。
余計に不利になると思いながらも睨み付けたら、彼は再び口を開いた。
「何、人の姉、泣かせてるんですか」
背後でミレイが何か言っていたが、それは耳を素通りした。
こいつは今、何て言った? 姉? ミレイが?
……とてつもない勘違いをしていた事に、ようやく気付いた瞬間、目が点になった。
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