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ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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 最初に感じたのは息苦しさだった。何だこの人ごみは。何だ、この空気の臭いは。見渡す限りの人、人、人。ポケモンの大量発生だって、こんな密度にはなりゃしない。
「ふむ。ここに辿り着いたか」
 どこかで聞いたような、でも聞き覚えのないような声がすぐ背後からして、ぎょっとして振り返ると、そこには白い上着と濃い灰色のズボンに身を包んだ黒髪の青年がいた。
「ここにはポケモンはいないから、人間の姿を借りた。さて、行くか」
 その言葉で、相手がアルセウスである事を知る。
「我の……と言ったら、ここでは浮くのだったな。俺の事を、アルセウスとは呼ぶなよ。そうだな…、碓井とでも名乗っておくか。お前も、大木戸と名乗る分には構わぬが、グリーンなどとは言わない方が良いだろう。こちらでは、それは人につける名前ではない」
「ポケモンはいない、名前に制約がある、どんな世界だよ、ここは!」
 アルセウスは身振りで抑えるように伝えてきた。
「正直、大木戸という名字でさえ、お前が名乗ると大変な事になりそうな気がするのだがな。特に、これから行こうとする場所を考えたら」
「当てがあるのか?」
「お前に纏わりつく気配と同じものを、向こうから感じる。だが、あそこにあるのは、ポケモンセンターだ」
 その言葉を聞いて、色々と拍子抜けした気分になった。ミレイはトレーナーの端くれなのだから、そりゃあポケモンセンターにいてもおかしくはない。だが、それだと矛盾する点もある。
「ポケモンセンターの何がそんなに恐ろしいんだよ。っつうか、ポケモンセンターあるんなら、ポケモンいるって事じゃねーの?」
「……行けば分かる。とにかく、下の名前を聞くくらい図々しいヒトがいるかもしれぬ。何か考えておけ。漢字で書けそうな名前をな」
 アルセウスは、事もあろうか超高密度の人の塊に突き進んでいく。見失ったら最後、見付けられる自信がない。この人ごみの中をはぐれずに突き進む自信もあまりないが。
 それにしても、この世界の人は、背が低いのだろうか? 何となく自分の視点が高くなったような錯覚を覚えた。

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