ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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結局、気分的に行き詰ってしまうと、足は自然とグレン島に向かっていた。
「……音羽?」
手にした紙に書かれている、全く馴染みのない名前を、舌の上で転がす。けれどそれで、何かが思い出せるわけでもなく。
「……」
ただ、泣きそうに辛そうに、それでも覚悟を決めた面持ちでユクシーに指示を出していたウタタの姿が紙に透けて思い浮かぶだけ。
『それにしても、あれを思い出したのか』
別れ際、ウタタはそう言っていた。
『君だけは特に念入りに、と言われて直接行った事が、仇になるなんてね。結果オーライになるのかは、まだ分からないけれど』
「何でオレだけ、念入りに記憶を消されなきゃいけなかったんだ?」
胸にぽっかりと空いた穴。自覚してしまえば、それはあまりにも大きい。
そう、ずっとモヤモヤとしていたのは、この穴から漏れ出してくる感情だったのだと、今なら言える。
こんなに思い焦がれているのに、何に思い焦がれているのか、その対象は靄のかかった記憶の向こう側にいる。それがもどかしくて、悔しくて、情けなくて。
忘れさせられた筈なのに、どうしてこんなにも、悲しいのだろう。
――きっと自分は、去ってしまった彼女に恋をしていた。
ふと浮かんだその思い付きを、すんなりと受け入れている自分がいた。
ならば猶更、どうして……っ!
感情が爆発しかけた矢先、ポケギアが鳴った。
「……もしもし」
深呼吸して無理矢理感情を抑え、ポケギアに出る。
『気になるデータを見付けてね、そちらに転送しよう。見たらきっと驚くよ。ウタタ君は、これを隠そうとしていたんだろうな』
「ワタル?」
『なぁに、あまりにも不自然な要求が気になったから、俺が殿堂入りのデータを見たんだ。それは、禁止されちゃあいない。そして、今から俺が送るのは、ただの写真だ。そうだろう?』
「……すまない。恩に着る!」
流石に言わんとしている事を察したら、自然と頭が下がっていた。ワタルが送ってきたのは当然ただの写真である訳がなく、そこには果たして問題の殿堂入りのデータが写されていたのだが。
『……見たかい? 驚いただろう?』
「ものの見事に、読めねーな……。しかも、こんなにピンボケしているなんて、普通ありえねーだろ」
『俺の写真の腕が悪いんじゃないぞ』
「わーってる。画面の一部だけがピンボケだなんて写真が撮れたら、いっそそれは才能だと思うぜ」
文字化けして読めなくなっている少女の名前、ピンボケしている彼女とポケモン達の写真。それでも、そこには彼女がいたという痕跡が残っていた。
白い帽子、赤い上着、青ジーンズのジャンパースカート。二つに括られて外にはねている、黒に近い焦げ茶の髪。ピンボケしていて顔は全く分からない。
『赤い上着の、女の子。黒っぽい髪は二つに括っていて……白い帽子をかぶっていて……』
レッドの言っていた特徴とも、合致する。
なのにどうしてだろう。記憶の靄は全く晴れてくれなくて、懐かしい筈の姿なのに特に何も思えなくて、ただ焦燥感だけが、胸を焦がした。
「……音羽?」
手にした紙に書かれている、全く馴染みのない名前を、舌の上で転がす。けれどそれで、何かが思い出せるわけでもなく。
「……」
ただ、泣きそうに辛そうに、それでも覚悟を決めた面持ちでユクシーに指示を出していたウタタの姿が紙に透けて思い浮かぶだけ。
『それにしても、あれを思い出したのか』
別れ際、ウタタはそう言っていた。
『君だけは特に念入りに、と言われて直接行った事が、仇になるなんてね。結果オーライになるのかは、まだ分からないけれど』
「何でオレだけ、念入りに記憶を消されなきゃいけなかったんだ?」
胸にぽっかりと空いた穴。自覚してしまえば、それはあまりにも大きい。
そう、ずっとモヤモヤとしていたのは、この穴から漏れ出してくる感情だったのだと、今なら言える。
こんなに思い焦がれているのに、何に思い焦がれているのか、その対象は靄のかかった記憶の向こう側にいる。それがもどかしくて、悔しくて、情けなくて。
忘れさせられた筈なのに、どうしてこんなにも、悲しいのだろう。
――きっと自分は、去ってしまった彼女に恋をしていた。
ふと浮かんだその思い付きを、すんなりと受け入れている自分がいた。
ならば猶更、どうして……っ!
感情が爆発しかけた矢先、ポケギアが鳴った。
「……もしもし」
深呼吸して無理矢理感情を抑え、ポケギアに出る。
『気になるデータを見付けてね、そちらに転送しよう。見たらきっと驚くよ。ウタタ君は、これを隠そうとしていたんだろうな』
「ワタル?」
『なぁに、あまりにも不自然な要求が気になったから、俺が殿堂入りのデータを見たんだ。それは、禁止されちゃあいない。そして、今から俺が送るのは、ただの写真だ。そうだろう?』
「……すまない。恩に着る!」
流石に言わんとしている事を察したら、自然と頭が下がっていた。ワタルが送ってきたのは当然ただの写真である訳がなく、そこには果たして問題の殿堂入りのデータが写されていたのだが。
『……見たかい? 驚いただろう?』
「ものの見事に、読めねーな……。しかも、こんなにピンボケしているなんて、普通ありえねーだろ」
『俺の写真の腕が悪いんじゃないぞ』
「わーってる。画面の一部だけがピンボケだなんて写真が撮れたら、いっそそれは才能だと思うぜ」
文字化けして読めなくなっている少女の名前、ピンボケしている彼女とポケモン達の写真。それでも、そこには彼女がいたという痕跡が残っていた。
白い帽子、赤い上着、青ジーンズのジャンパースカート。二つに括られて外にはねている、黒に近い焦げ茶の髪。ピンボケしていて顔は全く分からない。
『赤い上着の、女の子。黒っぽい髪は二つに括っていて……白い帽子をかぶっていて……』
レッドの言っていた特徴とも、合致する。
なのにどうしてだろう。記憶の靄は全く晴れてくれなくて、懐かしい筈の姿なのに特に何も思えなくて、ただ焦燥感だけが、胸を焦がした。
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