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ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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 気配のようなもの、を感じてグリーンがふと顔を上げると、こちらをジッと覗き込んでくる相手とばっちり視線が合った。
「うわっ!? ……レッド、来たのなら声くらい掛けてくれよ」
「……」
 レッドは無言で、グリーンの覗き込んでいたパソコンを見る。
「うん、お前が気を遣ってくれたのは嬉しいんだけどな、心臓にわりぃんだよ」
 グリーンは、リーグ本部に提出する書類の作成をしている最中だった。レッドはそれを邪魔すまいと思ったのだろう……きっと。
 彼は基本的にマイペースだ。そして、他人の都合など、あまり頓着しない。彼が気を遣う相手は、とてもとても、少ないのだ。
 グリーンは、ふぅ、と息を吐くと、キリの良い所まで仕上げた書類を一旦保存した。
「で、どうしたんだ?」
 肩をコキコキ鳴らしながら言ったグリーンの目の前に差し出されたのは、真新しいポケギアだ。深い深い、紅いポケギア。まるで持ち主の名前のように。
「おっ、ついにお前もポケギア買ったのか!」
 ふるふると、レッドは首を横に振る。
「……母さんが」
「ああ、成程な。せっかくだし、電話番号交換するか?」
「……」
「レッド?」
「使い方、分からない」
 今度はグリーンが、絶句した。
 数秒間の沈黙。
「そ……っか、そりゃあ、そうだよな。ポケギアが出たの、最近だしな! よっしゃ、それじゃ、オレが教えてやるよ!」
「……うん」

「やほろでーす、お邪魔しまーす」
 ジムの入り口から、言葉の割には遠慮がちな、小さな声が聞こえた。ただ、この声、小さくても結構通る。グリーンは気付かなかったかもしれないが、レッドは確実に気付いた。
「……あ、お取込み中やね。それじゃ、お邪魔しましたー」
 声の主は、早々に退散の意思を明らかにして、帰ろうとした。
「ミレイさん、前もすぐに帰りませんでしたか。用事があるのでは?」
「あー……。用事っていうほどのものでもないんで」
 ジムの入り口にいるトレーナーとほんの二言三言の会話を交わす、それだけの時間があれば、レッドが視線をそちらに向け、グリーンもそれに気付くには、十分だった。
「おっ、ミレイ!」
 グリーンに声を掛けられ、ミレイは「やほー」などと言いながら小さく手を振った。流石にリーダーに挨拶されては、そのまま引き返すのは失礼だと思ったのだろう。彼女はパネルの仕掛けの方へ歩いていく。
「へぇ……。ミレイっていうんだ」
 レッドの声音に何かを感じ、グリーンは再び彼を見る。
「お前が初対面の奴に興味を持つなんて、珍しいな」
 レッドは口角を釣り上げた。
「それは違うよ」
 パネルの仕掛けを解く少女を見る。
 今日も、彼女の雰囲気は、一般人と大差ないように見えた。だが、何となく異質な空気を纏っている事も、レッドは感じ取っている。それは、あの時に比べたら随分薄れてはいるものだけれど……彼女の根幹にかかわるもの。
「こんちゃ、リィちゃん。レッドさんも、こんにちはです」
「君、ミレイっていうんだって? ……今度は負けないよ」
 レッドの口から出た驚愕の事実に、グリーンは思わずミレイを見た。
 ミレイはと言えば、一瞬舌打ちしかねないほどの不機嫌そうな表情を浮かべ、次いで情けなさそうに眉を八の字に下げた。
「勘弁して下さい、レッドさん。別に、この前だって、バトルしたくてしたわけじゃ……」
「その割には、きっちり、勝った時のお願い考えてきてたけど?」
「ああ、それは、まぁ……。今までの事を考えたら、高確率で問答無用のバトルに突入するんじゃないかなーって思ってましたし。皆さんバトル好きすぎですよ」
「僕を超えた先に、君は何を見たの?」
 ミレイはその問いには答えなかった。彼女はどこか遠い目をし、何故かグリーンを見て、それからまたレッドに視線を戻し……彼と目を合わせて、答えに聞こえない事を言った。
「レッドさんのいた所からは、そりゃあ、空が広がっていましたよ?」

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「どうせ俺には才能なんてないんだ! あんたみたいな天才に勝とうなんて、夢物語だったんだよ」
 ミレイに負けた、まだ年端もいかない少年が悔しそうに言う。
 ミレイは、少年をジッと見た。
「それはない」
「え?」
「わたしが天才っていうのは、大きな間違いやよ。わたしには、バトルの才能なんてあらへん。技を使いこなすセンスも、最初の頃なんてポケモン達と一緒に走り回れる体力さえ、あらへんかってんから」
 彼女は、少年が持つボールを見た。
「リーグ挑戦するくらいなら、……愛があれば行ける。ポケモンに対する愛があれば、どうやったらポケモンが痛い思いせんで済むか考えるし、一緒に特訓したりする根性だって湧くし、ポケモンかて応えてくれる。流石にそれ以上になったら……バトルセンスとか、問われるかもしらんけど。生憎、わたしはそこまでのレベルちゃうし。わたし以上の天才鬼才は、世の中に溢れ返っとる。わたしなんかで絶望しとる場合やないで。才能なくてもリーグ挑戦まで上り詰めた実例が目の前におるんや。わたしよりセンスありそうやし、もっと上を見るべきや」
 それがどれだけ傲慢な台詞なのかを、ミレイは知らない。

「お願いしますよ、リオンさん!」
 頭を下げられた少年は、そこだけは兄と確実に違う榛色の瞳に、ありありと嫌そうな感情を浮かべてエリートトレーナーを見返した。
「オレは嫌だって言ってるだろ? 兄貴がいないんなら、ジムを閉めちまえよ」
「もうそれも限界ですよ! 一日だけ! 一日だけで、構いませんから! リーダーの代わり、やってくださいっ!」
「……」
 少年ははぁ、と嘆息する。
「ジム戦用のポケモン、ちゃんと用意してあるんだろうな」
「!! ありがとうございます!」
 ったく、あの兄貴、今度帰ってきたら絶対殴る! などと思いながらも、ジムトレーナーの頼みを断りきれなかった少年はしぶしぶ、トキワに向かった。
 まさかそこで、運命的な出会いをする事になるとは知らずに。

 ……まぁ、取っ掛かりとしては、こんなものか。

「グリーン君、実は割と頻繁にここ来てはるんですね」
 出会った当初よりは少しばかりコガネ崩れした口調で、少女は言った。
「……お前も、随分ここが気に入ったみたいじゃないか?」
「まぁ、確かに好きですけど」
 伏し目がちの少女は、そのままグリーンから視線を完全に外し、海に向けた。
 段差に座り、足をブラブラと揺らす少女の膝の上に、よく育てられたエーフィが上る。
 ゴロゴロと、甘えるように喉を鳴らし、少女の胸元に頭を寄せるエーフィ。少女もまた、エーフィの頭を撫でた。
「リーシャ。今日はまた随分、甘えたさんやね?」
 暫く撫でても、まだ撫でられ足らないとばかりに身を寄せてくるエーフィを、少女は見下ろす。その表情は柔らかく、うっすらと笑みさえ浮かべ。
 だが、彼女はふと顔を強張らせ、せっかく浮かんでいた笑顔もすっと消えた。切なげにエーフィを撫で、彼女は再び微笑んだが、今度のそれはどことなく歪に見えた。
「そうだ、お前」
 ふと思い立って声を掛けると、彼女は顔を上げ、グリーンを見る。ただ、視線を合わせるわけではなく、ほんの少し、伏し目がちに。
「なぁにー? あ、じゃなくて、何ですか?」
「オレ相手に、わざわざ丁寧語使わなくていいぞ」
 驚いたのだろう。少女は更に目を上げ、今度は完全に目が合った。
「はぇ?」
「つーか、むしろ使うな」
「……」
 瞬きすら忘れてグリーンの目を覗き込んでいた少女は、パッと慌てたように目を斜め下に滑らせた。
「え……っと、でも。わたし、何歳に見えますか」
「まぁ、オレよりは下だろうな。でも、それ、地じゃねーだろ? ポケモン相手だと、もっと砕けてるよな」
「えーと、まぁ、確かに砕けてるかもしれないですけど……。うーん……」
「それに、最近崩れてきてるぜ? それだったらいっそ、完全に崩してくれた方が、オレも気が楽だ」
「え、マジですか。それじゃあ、次から心掛けます」
 非難の意味を込めて少女をジッと見ると、彼女は少したじろいて。
「あー、うん。ごめん。気ぃ付けるように……すんね。リィ君」
 何だか色々な意味で崩れた口調で、言い直した。

 Twitterでメモしたものより、転載。

 ポケモンのいないこの現実世界、特に大阪なんかの都会では、今や腕を持ち上げる作業すら少なくて、重い荷物を持ち運ぶ事だって少なくて、車に乗る人も多くって。だから最近の若者向けの服は、妙に腕の部分が細い。肩から二の腕にかけての余裕が、殆どない。こっそり、ズボンだって、窮屈だ。
 …まぁ、ポケモン世界も、あまりにも重い荷物だけはあまり見かけないだろうけどね(笑) 実体と情報の壁を突破しちゃってる感じがあるから。ただ、ボール投げるし、体は使う。ポケモントレーナーなら、確実に。
 きっと、それは、見る人が見れば明らかな差なんだろう。道行く人の、腕の太さとか。ふくらはぎのラインとか。
 分かりやすく言えば、単純に体力とか握力とか、ボールを投げる時のコントロールとか。

 ウタタさんは肩の力が弱くてノーコン設定だと公にされてるけど、多分ミレイだって、相当ボール捌きは悪いんだろうなぁ…。
 というか、ポケモン世界の住民と比べたら、現実世界出身のトレーナーは、ボールの扱いが下手な人が多いに違いない、という妄想。比較級の問題で。
 まぁ、ここに更に夢補正がついたりするんじゃないかっていう現実については、今回は敢えてスルーで。

「こっちの人間は、何だか腕が細いな! マトモにボール投げれねーんじゃないの?」
 思わず正直な感想を口にしたグリーンに、ミレイは僅かばかり首を傾げ。
「だって、投げる必要性もあらへんもん」
 至極まっとうに、指摘した。
 ボールを日常的に投げる必要性なんて、ない。だって、ここは……。
「あ……。そっか、そうだったな」
 成程、こういう些細な点でも、変わってくるものなのか。
 ポケモンがいないという事は。

 その日も、グレン島にはミレイがいた。
 ジョウト出身というのは実は嘘で、グレン島から避難していた、元グレン住民なのではないかと疑われてもおかしくないくらいには、彼女はよくグレン島に来ていた。
 まぁ、それは、マサラ出身でトキワに勤めるグリーンにも言える事なのだが。ただ、何となく、何かに惹かれるようにして、ここに顔を出してしまうのである。
 この頃は、グリーンは、その理由については考えないようにしていた。
 大きな風音に気付いてか、ミレイがグリーンの方を振り返る。そして、ふわりと、笑顔を浮かべた。
 一瞬、その笑顔が、今までに見た事のないようなものに見えた。いつも最初はどこか遠慮がちで、出会い頭からまっすぐ相手の顔を見る事の少ないミレイが、明らかにグリーンを見て、そして、彼に向かって、笑ったような錯覚。
「あ、リィちゃん」
 瞬き一つの間にミレイはいつものように目を伏せ、そしていつもと同じようにそれだけを言うと、口を噤む。
「何か良い事でもあったのか?」
「んー? どーやろなぁ」
 何か二言三言交わせば、ミレイはグリーンを見上げる。それは、最近ではいつもの事。
 前回、何か酷い事を言われた気がするのに、それが嘘なのではないかと思いたくなる。
 グリーンは、まだ、多くの事に気付かないでいた。

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