ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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ポケモンセンターから再び人混みを掻い潜り、駅へと案内してもらう。
心に余裕が出てきたからだろうか、今では周りを観察する余裕もできた。ポケモンセンターから駅に向かうまでの道は若者をターゲットとする店が立ち並び、同じ年頃の男女で溢れ返っているのだが。
「なぁ、ミレイ」
「ん?」
「こっちの人間は、お前に限らず腕が細いな! マトモにボール投げれねーんじゃないの?」
ミレイはきょと、と首を傾げ。
「だって、投げる必要性もあらへんやん」
至極まっとうに、指摘した。
ボールを日常的に投げる必要性なんて、ない。何故なら、ここには……。
「あ……。そっか、そうだったな」
成程、こういう些細な点でも、変わってくるものなのか。ポケモンがいないという事は。
ミレイの斜め前を歩くミレイの弟なんか、本当に細い。そして、高い。
「ま、むぅみたいなんはそれでも痩せすぎやけど。こういうのをモヤシという。身長だけしかないんよね。何ぼやっけ? 172?」
「ちゃうし。180はあったと思う」
「ほら。リィちゃんは今なんぼやろなー。わたしが164あって相変わらずの身長差やから、170はあるやろうけど」
確か、オレが知るミレイの身長は160cmそこそこで、オレも170cmには到達していない筈だった。まさかあっさり170cmの壁を突破する日が来るとは……。
……複雑な気分だ。
「ほな、わたしは定期あるし……わたしがこん二人の電車代出せば電車代ちょうど半分ずつやな?」
「だな。俺は帰りも自分で出すわ」
「あんがとー。ってか、珍しいよね」
ミレイは弟の肩に掛けられた鞄を軽く握った。
「うち来る? なんて言うのはわたしじゃなかったっけ? んで、むぅちゃんが呆れてなかったっけ?」
「失敬な。俺かて友達呼んできてるっつの」
「うーん……」
相変わらず微妙な顔の姉を振り返り、弟は苦笑した。
「眠いから、思い出せないんやろ? 電車の席確保したら、寝ーや」
「えっ、寝んの!? 今わたしテンション高いのに!?」
「つーか、寝ろ」
「命令形!? むすけ酷す!」
そんな仲の良い会話を繰り広げつつ、二人は切符を買った。
この世界のお金が、また興味深かった。硬貨や紙幣なんて、実際に使われているのを見るのは初めてだ。
渡された切符で改札を通り、これまた殺人的に人口密度の高い電車に乗り込み……この混雑の中でどういう魔法を使えばそうなったのか、ミレイはちゃっかりと彼女のみならず俺の分の座席まで確保なんかしていて。
リニアよりも揺れる電車が動き出すと、ミレイはコックリこっくり舟を漕ぎ始めた。眠いのだという弟の言葉は正しかったらしい。
彼女がもたれかかって来たのをそのままにさせながら見上げれば、まだ座席を取れずに前に立っているミレイの弟とアルセウスが、何やら深刻な表情でぼそぼそと何事かを相談していた。
「グリーンさん」
何駅か過ぎて、人が減った頃。逆隣りに座席を確保したミレイの弟が、真剣な顔で話し掛けてきた。
「グリーンさんは、姉を追いかけてこっちまで来たんですよね?」
「追いかけてっつーか……まぁ、結果的にそうなるかもな」
「姉の事、好きですか」
彼は真剣だった。だから、オレも、退けなかった。
「ああ。好きだ」
「本当に? 姉の人生に責任持てるくらいに? こう言っちゃなんですが、グリーンさんモテモテでしょう」
「遊びで好きになったんじゃねーよ」
オレの返事を聞くと、彼は表情を緩ませた。
「それならお願いがあるんです。姉を、連れ帰ってやってくれませんか」
心に余裕が出てきたからだろうか、今では周りを観察する余裕もできた。ポケモンセンターから駅に向かうまでの道は若者をターゲットとする店が立ち並び、同じ年頃の男女で溢れ返っているのだが。
「なぁ、ミレイ」
「ん?」
「こっちの人間は、お前に限らず腕が細いな! マトモにボール投げれねーんじゃないの?」
ミレイはきょと、と首を傾げ。
「だって、投げる必要性もあらへんやん」
至極まっとうに、指摘した。
ボールを日常的に投げる必要性なんて、ない。何故なら、ここには……。
「あ……。そっか、そうだったな」
成程、こういう些細な点でも、変わってくるものなのか。ポケモンがいないという事は。
ミレイの斜め前を歩くミレイの弟なんか、本当に細い。そして、高い。
「ま、むぅみたいなんはそれでも痩せすぎやけど。こういうのをモヤシという。身長だけしかないんよね。何ぼやっけ? 172?」
「ちゃうし。180はあったと思う」
「ほら。リィちゃんは今なんぼやろなー。わたしが164あって相変わらずの身長差やから、170はあるやろうけど」
確か、オレが知るミレイの身長は160cmそこそこで、オレも170cmには到達していない筈だった。まさかあっさり170cmの壁を突破する日が来るとは……。
……複雑な気分だ。
「ほな、わたしは定期あるし……わたしがこん二人の電車代出せば電車代ちょうど半分ずつやな?」
「だな。俺は帰りも自分で出すわ」
「あんがとー。ってか、珍しいよね」
ミレイは弟の肩に掛けられた鞄を軽く握った。
「うち来る? なんて言うのはわたしじゃなかったっけ? んで、むぅちゃんが呆れてなかったっけ?」
「失敬な。俺かて友達呼んできてるっつの」
「うーん……」
相変わらず微妙な顔の姉を振り返り、弟は苦笑した。
「眠いから、思い出せないんやろ? 電車の席確保したら、寝ーや」
「えっ、寝んの!? 今わたしテンション高いのに!?」
「つーか、寝ろ」
「命令形!? むすけ酷す!」
そんな仲の良い会話を繰り広げつつ、二人は切符を買った。
この世界のお金が、また興味深かった。硬貨や紙幣なんて、実際に使われているのを見るのは初めてだ。
渡された切符で改札を通り、これまた殺人的に人口密度の高い電車に乗り込み……この混雑の中でどういう魔法を使えばそうなったのか、ミレイはちゃっかりと彼女のみならず俺の分の座席まで確保なんかしていて。
リニアよりも揺れる電車が動き出すと、ミレイはコックリこっくり舟を漕ぎ始めた。眠いのだという弟の言葉は正しかったらしい。
彼女がもたれかかって来たのをそのままにさせながら見上げれば、まだ座席を取れずに前に立っているミレイの弟とアルセウスが、何やら深刻な表情でぼそぼそと何事かを相談していた。
「グリーンさん」
何駅か過ぎて、人が減った頃。逆隣りに座席を確保したミレイの弟が、真剣な顔で話し掛けてきた。
「グリーンさんは、姉を追いかけてこっちまで来たんですよね?」
「追いかけてっつーか……まぁ、結果的にそうなるかもな」
「姉の事、好きですか」
彼は真剣だった。だから、オレも、退けなかった。
「ああ。好きだ」
「本当に? 姉の人生に責任持てるくらいに? こう言っちゃなんですが、グリーンさんモテモテでしょう」
「遊びで好きになったんじゃねーよ」
オレの返事を聞くと、彼は表情を緩ませた。
「それならお願いがあるんです。姉を、連れ帰ってやってくれませんか」
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