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ポケモンH.G.トリップもののメモ帳。
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「あ、ミレイさん。ちょっとこっち来て下さい」
 アカツキを足元に連れて、ミレイが奥の部屋を出ると、隣の部屋でパソコンと睨めっこをしていた助手が、ディスプレイから目を離した。
「はい、これ傷薬です。くれぐれも無茶はしてはいけませんよ」
 近寄ってきたミレイに、助手はスプレーの頭みたいな物とカートリッジを渡す。使う時はカートリッジに頭を取り付け、補充する時はカートリッジを取り替えるのだと、物珍しそうに受け取った傷薬を観察する相手に説明した。
 研究所はミレイの知る大学の研究室などとは違い、実に開放的な造りをしていて、まず扉がすごく少ないのである。奥の部屋での会話は、ミレイが説明するまでもなく助手の元まで筒抜けだった訳だ。
「ポケモンが傷付いたなら、ヨシノまで行けばポケモンセンターで回復してもらえますし、ここでも向こうの部屋に回復装置を置いてありますけど、間の道には回復する場所がありませんから……。それにポケモンは完全に回復できるかもしれませんけど、ミレイさんはそうはいかないんですからね」
 数日前に突然降ってわいた相手をここまで心配してくれる助手に、ミレイは胸の奥がジーンとした。
 お礼を言い、研究所の玄関に向かいながら、ミレイはアカツキに呟いた。
「ホンマに、好い人達やね。『平和』やわ」
 アカツキは首を傾げた。何が『平和』なんだろう?
 その様子を見て、ミレイはちょっと笑った。
「多分、分からんと思う。でも、ここはわたしにとって、とっても『平和』なとこなんよ。『夢』みたいな場所や」
(もしかしたら、ホンマに『夢』なんかもしれんしな)
 そこだけは、忘れないようにしないといけない。いつか、自分はここに来た時同様、全く唐突に元の世界へと消えてしまうかもしれないのだ。
 何気ない自分の一言から己の存在の不安定さを認識し、ミレイは一瞬真剣な眼差しでアカツキを見た。
(その時までにわたしができる事……)
 ミレイは意識してアカツキに笑いかけた。
「行こか、アカツキ。外の世界は、きっと広いで?」

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